観劇感想文

演劇や映画の感想や考察/思ったこと感じたこと

明治座の変「麒麟にの・る」感想

みなさま、あけましておめでとうございます。

 

年始から散財した会社員のやまだです。

今年から、演劇や映画などの感想・考察をこちらのブログにまとめていこうと思い立ちました。

早速書いていきたいと思います。

 

今回取り上げるのは、る・ひまわり主催 明治座の変「麒麟にの・る」。

鳥頭のため既に記憶が抜けかけていますが、それなりに感想や考察をまとめていこうと思います。

自分用のメモ書きではありますが、暇つぶしにでもお読みいただけますと嬉しいです。

 

 

※物語や演出の内容に触れたものとなっております。ご注意ください。

※トンチンカンなこと言ってるなこいつ、と思ったら教えてくださると嬉しいです。

 

 

 

le-hen.jp

enbu.co.jp

今年のテーマは、日本の歴史上、最も有名にして最も謎が多いとされる“本能寺の変”を、
今まで見たことがないトンデモ設定の新たな物語として描きます。
主人公は、重大な秘密を抱えた明智光秀織田信長。「明智光秀はなぜ織田信長を討ったのか?」“本能寺の変”最大の謎に迫ります。 

 

 

【ざっと感想 】

 

演劇制作会社る・ひまわりと明治座がタッグを組み、2011年から毎年上演してきた「年末”祭”シリーズ」。

2019年のテーマは「本能寺の変」でした。

 

物語は、キリンとキリンの飼育員の田村さんが、現代に生きる理系の青年竹中くんを「こちらの手違いで急遽、竹中半兵衛の代役を探している」「竹中半兵衛になって!お願い!」と、1567年の本能寺へタイムワープで連れ去ってしまうシーンから始まりました。

なんでやねん、と思った方、正解です。

でも、こういう冒頭からトップスピードで繰り広げられる独自の世界観が癖になっていくんです。

 

手違い、と言っていたのでこの2人(1匹と1人?)は神様的なポジションで人物を操作し、歴史を動かしている…?などと考えたのですが、そんなことは主人公の1人、織田信長の登場シーンですべてが吹き飛びました。

狙いうち」を歌いながら舞台下手からフライングで登場してくる織田信長、ずるい。

面白いにきまってるじゃん。

飛び道具とは言うけど、本当に飛びながら飛んでいました。

舞台上では柴田勝家荒木村重佐久間信盛、森蘭、森丸の5人がカッコよく踊っており(5人ともキレキレでした)、私はどこを見ればよかったのか。

 

かと思えばもう1人の主人公の明智光秀は、えぐい歌唱力で内容が空っぽの歌をかっこよく歌い上げるし。

まってまって、処理が追いつかないよ。おもしろすぎるでしょ。

パンの歌は大好きすぎて、観劇2度目からはパンの歌が近づくと私の表情筋がゆるゆるになっていました。

卵かけご飯おいしいよね、わかる。

 

序盤は笑い要素が多く、楽しく物語を追っていくことができました。

ですが、その中にもちゃんと後の展開に繋がる伏線がうまく置かれているので、ただ楽しいだけじゃない。

演技・演出・脚本すべてにおいて考察厨にとっては餌で、舞台機構の使用の意図も、ひとつ気づくと答え合わせのためにまた観たくなるというループにはまった、何度見ても面白い作品でした。

 

 

 

演出について

 

奈落とか盆の回転とか、私の解釈をここに書いても良いでしょうか。

いいよ、と聞こえた気がしたので書いていきますね(幻聴)。

 

奈落を使用した演出は、キリン、田村さん、竹中くん、信長(回想)、信行(回想)の5人にしか使用されていませんでした。

その5人って、”物語の時間軸の中に本来はいない人”だから奈落を使ったのではないかなと思うのです。

キリンと田村さんは神の遣い的なポジションで人間ではないし、

竹中くんはタイムワープしてきた現代の人なので本来の竹中半兵衛ではないし、

信長と信行は物語の時間軸にいる間は奈落は使わなかったのに、回想の時のみ奈落から登場する。

他の登場人物たちには、転換の際に特別奈落が必要なシーンがなかったというのはそうなのですが、考察厨はわざわざ理由を付けたがるものでして…。

トンチンカンだったらごめんさなさーい、ゆるしてぴょん。

 

盆は、基本的には反時計回りに回転して転換するのですが、何回か時計回りに回転するシーンがありました。

あれは確か、

足利義昭正親町天皇顕如の登場シーン

・織田軍へ光秀が侵入するシーン

・荒木、勝家、信盛、お市が謀反を起こし義昭が帰蝶を斬るシーン

本能寺の変の後、信長と信行が安土城に逃げてからのシーン

の直前の転換だったと思います。

(鳥頭なので、場所に関しては自信がありません。)

恐らく、”物語の流れが変化する”、または”物語上の信長の状況が変化する”箇所で時計回りに回転するのかな、と解釈しました。

これはトンチンカンじゃないと思うんですけど、どうだろう。

 

足利義昭正親町天皇顕如の登場

 →信長に対抗する人物たちが登場する。

・織田軍へ光秀が侵入するシーン

 →光秀の行動によって話が進む。兄弟の再会。

・荒木、勝家、信盛、お市が謀反を起こし義昭が帰蝶を斬るシーン

 →信長の仲間が謀反を起こす。数少ない味方が死ぬ。

本能寺の変の後、信長と光秀が安土城に逃げてからのシーン

 →信長の心境の変化。今後の人生を考える。

(※信長…安西慎太郎さん、光秀…平野良さん、で書いています。)

みたいに考えると、信長の状況の変化と関係しているように思えてきません??

 

 

 

【登場人物について】

 

それにしても、この作品上の信長(信行)ってかなり臆病なんだなと思ったのは私だけじゃないはずです。

武力はあるけれど、精神的には弱くて、精神力を武力でカバーしているように見えました。

だから森蘭の「違うよ。信長様が弱いからだよ。」のセリフで最高にゾクゾクして…。

森蘭のあのシーンが大好きでした。

 

それと、信長(信行)は「非常に短気で冷酷」な性格と冒頭では言われていましたが、本当にマジで冷酷なら、領地に侵入してきた兄を「殺す価値もない」と言って殺さなかったり、絶対ここで首斬れるじゃんというところで兄の足と肩しか斬らなかったりなんてしないよなぁと思ったり。

一番仲間や友情、愛情に固執していたのは彼自身で、でも自分の行動によって周囲から人が離れていく、という悲しき矛盾。

全ては自分の精神力の弱さが原因、ってめちゃくちゃ悲しいじゃん。

自業自得だと思ってしまうので私は同情はできないけれど。

 

 そういう主人公なので、私は(本物の方の)光秀が愛しくてたまりませんでした。

最後の本能寺のシーンではペッペと2人の首を斬り落とすことが出来たはずなのに、「逃げることは得意だろ」で逃すって、あんた!

やさしすぎ〜〜〜〜;;;

その後どうなるかって分かって逃してるところがもう、最強に愛しい、泣ける。

光秀の妻、明智煕子の着物の柄ののぼり鶴は「夫婦円満」という意味もあるみたいです。

そのままやないか、愛しい。明智夫婦つらい。

 

そして秀吉、三成、竹中くんのトリオも愛しい。

この設定のままで続きが見たい。

私は元から石田三成が大好きなので、秀吉が「信長様から頂いた最初の家臣で私の宝でございます」「こやつは天下統一に役立ちます」と三成をフォローしたシーンがもう…。

三成・竹中くんと一緒に「勿体ないお言葉…」「一生ついてく…」と泣きました。

もうまじでわかりみが深い。わたしも付いていきます秀吉様。

ほとんどの家臣が最終的に寝返った中、最終的に残ったのは秀吉、三成、竹中くんのトリオだし、信長に斬られそうになるのに「私はあなたを死なせません」って瞬きひとつせず信長を見つめて言い切っちゃうのとかも、あ〜〜〜かっこいい〜〜〜〜〜。

今作品の秀吉様、お顔も行動も性格も、どれも本当にカッコよくて大好きすぎます。

 

そりゃ三成だって秀吉様LOVEになるよね。

竹中くんに対して「(秀吉様)かっこいいだろ?」ってニコニコ笑顔で言っちゃう三成、秀吉にぞっこんラヴじゃん。最高。

気持ちめちゃくちゃわかるぞ三成。

自分を「イケメン」と言ってしまう飛び道具的ポジションの三成は新鮮だったのですが、私はそんな三成が大好きです。

 

竹中くんは現代から連れられてきたのにめちゃくちゃ馴染んでるのが面白すぎます。

掃除ロボットのフィルター部分を剥がして三成の涙を拭かせるシーンなんて、直前まで信長に斬られそうになってたのに、なんだその余裕!?

竹中くんが超絶タフで笑いました。

でも、歴史を知っているからこその表情をしているシーンがあったり、浅井長政自害後の信長の行動にドン引きしたり、心から信長に怯えたりと、馴染んでいるけれど感覚は現代のままなところが良かったです。

ついつい自分の知っている知識を口に出したくなってしまう”オタク”の悪い癖が出てたりね。

衣装が某有名映画そのものなのもバチクソウケました。

 

柴田勝家浅井長政お市、これはもう言わずもがななのですが。

この3人は本当にカッコいいし、強いし、切なかった。

長政自害後、勝家と政略結婚させられるシーンのお市の歌は鳥肌ものでした。

それまでのお市の優しい柔らかい雰囲気からがらりと変わって、目が怖くてそれがどうしようもなく切なくて…。

帰蝶が亡くなった後のお市と勝家のシーンも、めちゃくちゃ悲しいし、勝家がカッコいい。そして切ない。

2人は仲が良くて最期まで添い遂げたという史実を思い出して、余計に2人の幸せを願ってしまいました。

 

信長と敵対関係にある足利義昭正親町天皇顕如の3人もそれぞれの関係性がおもしろかったですね。

正親町天皇の、容赦無く人間を駒扱いするところが潔くて好きでした。

賽を振って人間を操るシーンが何度かありましたが、あれはただ操られる側の人間の思い込みみたいなもので結局実行するのは人間自身で天皇は何もしていない(態度で従わせているだけ)、ってことなんでしょうか。

先見の明とか、観察眼とかが優れていたのかなぁと思いながら見ていましたが、この辺りは解釈がまとまっていません。

 

 本物の方の信長は、弟とは対照的に非常に優しくて優柔不断な、戦国武将に不向きな性格でしたね。

終盤の弟の台詞で「兄とは同じ運命を辿っていた」とありましたが、兄の足りない部分を弟が補填しているバランスの良い兄弟で、これが戦国の世ではなかったら…と考えてしまいます。

 

あと、キリンと飼育員の田村さん。

キリンは登場からむちゃくちゃで、登場してからもむちゃくちゃで、本当にマイペースでしたね。

それが面白くて好きなんですが、毎回押していたのはキリンのシーンも原因の一つなのでは?と多少思ったり、思わなかったり(そもそも開演時間が押していたけれど)。

ふざけた格好で真面目な役をしているというギャップが良かったですね。大好きです。

安土城が建つシーンでキリンが信長の方へ吸い寄せられていっていましたが、安土城が建設されたことで織田信長の天下統一がより一層近づいたからキリンが吸い寄せられた、って解釈でいいんでしょうか。

安土城織田信長天下布武の象徴と言われている城ですし。

 

 

 

【まとめ】

 

「年末”祭り”シリーズ」を観るのは初めてだったのですが、1部のお芝居も2部のライブも本当に楽しかったです。

2部の感想は「死ぬほど引き笑いした」で終わらせてください。

1部のお芝居は、歴史をトンデモ設定で描くというコンセプトでしたが本当にその通りで、でも演出と脚本の技によって独自の世界観に引き込まれてしまうという…。

語彙力がないのでこれ以上の言葉が出てきませんが、とても面白かったです。

来年も明治座で年を越したくなりました。